あなたは、脾臓はありますか? 〜ワクチン接種のススメ〜
自分の脾臓があるかないか、考えたことはありますか?
生まれつき脾臓がない人(無脾症)、血液の病気*1や怪我や事故などで脾臓が損傷したことが原因で手術で脾臓を取ったことがある人(脾摘後)など*2・・。
自分に当てはまるかも!?と思った方がいらっしゃいましたら、是非この記事を読んで頂きたいです。
*1: 特発性血小板減少性紫斑病、遺伝性球状赤血球症
*2: 脾臓機能低下者(鎌状赤血球症、骨髄移植後、HIV/AIDS、セリアック病、アルコール性肝疾患など)も含む
脾臓は左の上腹部にある臓器ですが、「免疫」に関してとても大切な役割をしている臓器です。つまり、細菌が侵入してきた際にそれを除去する役割です。特に、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、髄膜炎菌といった細菌を除去する役割があります。そのため、脾臓がない・脾臓の機能が低下した方は、これらの細菌感染にかかった場合、重症化しやすくなります。 医療者はこれをOPSIと言います (OPSI: overwhelming post-splenectomy infection 脾摘後重症感染症) 。ちなみに、OPSIの死亡率は高く、50-70%と言われています。
お伝えしたいことは
① ワクチン接種をしましょう
② 発熱したら病院を受診しましょう
③ 熱帯地方へ渡航予定の場合は、病院を受診しましょう
④ 犬に咬まれたら抗菌薬投与が必要になるため病院受診をしましょう
以上の4つです。
今回は「① ワクチン接種をしましょう」についてご説明します。
■対象の細菌とウイルス
肺炎球菌
インフルエンザ桿菌b型 (Hib: ヒブ)
髄膜炎菌
インフルエンザウイルス
上記の3つの細菌と1つのウイルスが対象となります。
■必要なワクチンの種類
・肺炎球菌:プレベナー®️(PCV13)、ニューモバックス®️(PPSV23)
(肺炎球菌ワクチンは2種類あります)
・インフルエンザ桿菌b型:アクトヒブ®️ (Hibワクチン)
・髄膜炎菌:メナクトラ®️
・インフルエンザワクチン
■おおよその金額
プレベナー®️ 12,000円
ニューモバックス®️ 8,000円
アクトヒブ®️ 8,000円
メナクトラ®️ 20,000円
インフルエンザワクチン 4,000円
(ただし、医療機関によって金額は異なりますので参考として下さい)
実際には、脾摘の手術が予定されていれば、その2週間以上前か、脾摘後であればその2週間以上後に接種を行う必要があります。まずは、プレベナー®️とアクトヒブ®️を同時接種し、10月以降であればインフルエンザワクチンの接種も行う形となります。その後、ニューモバックス®️やメナクトラ®️の接種を予定します。過去の接種歴をみながら接種するか判断します。
また、ニューモバックス®️は5年後に再接種、メナクトラ®️は8週間あけて2回接種し、5年後に再接種が推奨されていたりと、複数回接種する必要があるワクチンもあります。
ワクチンの選択、接種のタイミング、接種スケジュールなど、医師と相談して決定する必要がありますので、接種が必要な際は、お近くの専門医療機関を受診ください。
★この記事を記載しようと思ったきっかけ★
とある日、初診の外来で腹痛患者さんが来院されました。お話を聞くに、「小さい時から脾臓はないです。」と。先天的に無脾症とのことでした。「肺炎球菌ワクチンといったワクチンは打ったことありますか?」と尋ねると、「打ったことないです。」とおっしゃられました。
今回の腹痛とは別にはなりますが、これからの生活で重症感染症に罹患しないためにはワクチン接種が大切であることをお伝えし、当時、感染症科へご紹介しました。その後、肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを接種されていました。
「脾臓がない」と言われたら「脾臓がない」と分かったら、その方のこれからの健康を考える事がとても重要です。
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